八王子市で移動に困ったら?|救急救命士が語る、186km²の広域搬送・はちバス・タクシー助成の使い分け
八王子市は、東京都の市区町村の中で最も広い面積を持つ都市です。約186km²という広さの中に、山岳地・河川・住宅街・繁華街・高速道路の全てが共存しています。
私は消防署の救急隊員として19年間、この八王子市を含む多摩西部地域で搬送に従事してきました。
八王子市内での救急出場はひっきりなし——文字通り、休む間もなく次の出動がかかります。
救命救急センターを持つ東京医科大学八王子医療センターは、心肺停止の患者から小児の急病まで幅広く引き受けてくれる頼もしい病院ですが、一般受診・救急外来・救急車の搬入が同時に集中するため、救急隊が収容要請を出しても「他患者対応中で受入困難」と断られることも少なくありません。
これは病院の怠慢ではなく、純粋なキャパオーバーです。それだけ八王子市の医療需要は大きく、そして高齢化と人口構造の変化がこの需要をさらに押し上げ続けています。
こうした現場経験を持つ者として、今は「介護救命士」として移動支援を行っています。
この記事では、八王子市で使える公的支援(タクシー助成・移動支援事業・各種手当)、地域交通(はちバス)、そして私自身が八王子市内で経験した搬送事例を交えながら、移動に困ったときの選択肢を整理します。
はじめまして。東京都日の出町で「介護タクシーはばたき」を運営している、代表の仲田泰明と申します。
救急救命士として消防署に19年勤務し、現在は地域の移動支援に従事しています。
1. 八王子市の障害者向け公的支援
タクシー・ガソリン費助成事業
重度の障害のある方を対象に、タクシー料金またはガソリン費を助成券で補助する制度です。
対象者:
-
身体障害者手帳1級・2級
-
愛の手帳1度・2度
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※施設入所者は対象外
助成内容(月ごとの上限枚数):
| 区分 | 月の上限枚数 | 月額助成額の目安 |
|---|---|---|
| 一般 | 8枚 | 最大2,400円相当 |
| 視覚障害者 | 12枚 | 最大3,600円相当 |
| 透析追加分 ※ | +4枚 | +1,200円相当 |
助成券1枚=300円。タクシー料金に不足分が生じた場合は自己負担、つり銭は請求できません。
※透析追加の条件:身体障害者手帳1・2級でじん臓障害かつ透析治療のために通院している方。ただし病院・施設の送迎バス利用者、生活保護受給者は対象外。
八王子市の特徴——助成券が福祉有償運送でも使える:
他の多くの自治体ではタクシー会社・ガソリンスタンドのみが助成券の使用先ですが、八王子市では道路運送法第78条に基づく許可を受けた福祉有償運送事業者でも助成券が使えます(要綱第3条第2項)。介護タクシー(福祉有償運送)を利用する際に助成券を充当できるため、選択肢の幅が広がります。
所得制限について(令和6年度から新設):
令和6年度より、対象者本人の前々年(または前年)の所得が一定額を超える場合は対象外となりました。具体的な所得基準額はHP・要綱に記載がないため、申請前に障害者福祉課(042-620-7245)へご確認ください。
申請先: 八王子市役所 障害者福祉課(窓口・郵送申請可)
障害者移動支援事業
屋外での移動が困難な障害者・障害児が、社会生活に必要な外出をする際にヘルパーが同行する制度です(令和6年4月改正版に基づく)。
対象者:
-
視覚障害者(身体障害者手帳・視覚障害)
-
愛の手帳所持者(知的障害者)
-
精神障害者(発達障害者を含む)
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身体障害者手帳所持の学齢障害児・生徒
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難病(車椅子使用)の学齢者
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その他市長が特に必要と認める者
※満15歳未満は学齢以上のみ対象(未就学児は対象外)
月間利用時間上限:
| 対象 | 月間上限 |
|---|---|
| 満15歳以上 | 30時間 |
| 障害児等(学齢〜14歳) | 12時間 |
利用者負担: 世帯の課税状況による(非課税世帯・生活保護受給者は無料)。具体的な単価は市窓口でご確認ください。
利用できない外出: 通勤・通学・定期的な通院(通年かつ長期にわたるもの)、営業等の経済活動、社会通念上適当でない外出。
心身障害者福祉手当(八王子市独自制度)
| 月額 | 対象 |
|---|---|
| 15,500円 | 身体障害者手帳1・2級、愛の手帳1〜3度(中度以上)、脳性麻痺、進行性筋萎縮症 |
年3回(4月・8月・12月の18日頃)に前月分まで振込。20歳以上・65歳以上での新規申請不可・所得制限あり。
特定疾病患者福祉手当(八王子市独自制度)
難病(指定難病・東京都難病患者認定)のある方を対象とした、八王子市固有の手当です。
| 月額 | 対象 |
|---|---|
| 4,000円 | 指定難病または東京都認定の特定疾病にり患し、認定を受けている方 |
|
年3回(4月・8月・12月)支払。65歳以上での新規申請不可・心身障害者福祉手当との併給不可・所得制限あり。
2. 地域交通「はちバス」——4コース・1日5便の現実
八王子市のコミュニティバス「はちバス」は、市内の交通空白地域を補完するために西東京バスと協定を結んで運行されています。高齢者・障害者・妊婦等の外出支援を主な目的とした路線です。
コース一覧:
| コース名 | 区間 |
|---|---|
| 北部コース | 西八王子駅 ⇔ 東海大学八王子病院 |
| 西部コース | 北の根東(川口町) ⇔ 西八王子駅 |
| 東部コース | JR片倉駅 ⇔ 日生団地 |
| 西南部コース | 松子舞団地 ⇔ 高尾駅南口 |
運賃(距離制・3段階):
| 区分 | 運賃 |
|---|---|
| 大人(短距離) | 100円 |
| 大人(中距離) | 170円 |
| 大人(長距離・最大) | 200円 |
| 障害者手帳所持者 | 大人の半額(端数切上げ) |
| 小児 | 大人の半額 |
シルバーパス・ICカード(Suica/PASMO)・西東京バス回数券が使用できます。
「はちバスがあれば大丈夫」とはならない理由:
全コース1日5便という本数は、定期的な通院の往復を柔軟にカバーするには限界があります。
乗り継ぎに失敗すると数時間待つ必要があり、体調の変化が読めない方や長時間の待機が難しい方には不向きです。
「はちバスのルート上に住んでいるから通院できる」ではなく、「時間が合えば使える」という手段として位置づけるのが実態に近いと言えます。
山間部の西部コース(川口町方面)では、バスが通らない集落も残っており、冬季の積雪・凍結時期は路面状況も移動の障壁になります。
3. 救急救命士が語る八王子の医療マップ
救急隊員として19年間、八王子市内に出動し続けた経験から、主な医療機関の特徴を現場目線でお伝えします。搬送の依頼をいただく際の参考にしてください。
東京医科大学八王子医療センター(救命救急センター)
圏央道の高尾山ICを降りて東に進んだところにあります。心肺停止から小児救急まで、八王子市の救急医療の最後の砦として機能しています。
日中は一般来院車両が多く、病院に向かう道が渋滞することがあります。救急外来は正面玄関の北側奥に設置されており、一般玄関とは入口が異なります。
救急隊時代、収容先として最も頼りにしてきた病院ですが、前述の通り高い需要ゆえに受入困難となる場面もある。退院・転院の際に「この病院から連れ帰ってほしい」という依頼の起点になることも多いです。
東海大学八王子病院(2次救急)
循環器・脳神経外科・整形外科など複数科目で2次救急患者を受け入れてきた病院です。急性期治療後の後方病院への転院先としてよく利用されます。
救急外来は南側1階に設置。介護タクシーの停車場所は2階正面玄関前となるため、迎えの際は2階へ向かいます。
右田病院(2次救急)
比較的重症度の低い患者を受け入れる2次救急病院です。循環器・脳神経外科・整形外科など幅広い科目があり、大学病院には搬送しにくい「中等症」の患者が行き着くことが多い。
救急外来は西側1階に設置。介護タクシーは1階正面玄関前に停車します。
急性期後の後方転院、老人ホームへの退院、自宅への帰還など、様々な「次の場所への移動」の出発点となります。
北原国際病院(脳神経外科の砦)
救急隊が「ここに運べれば」と思う場面が多かった病院の一つです。
特に脳神経外科に強く、脳梗塞の転帰は「時間・処置・担当医の腕」で大きく変わると言われる中、この病院に収容できたときは安心感がありました。
複数の科目で患者を受け入れており、退院・転院搬送でのご依頼もいただいています。
4. 広大な市域と老人ホーム——186km²の移動課題
市内搬送でも「片道30〜40分」
八王子市の面積は約186km²。市の中心部から西部山間地区まで直線距離でも20km以上あります。
退院・転院搬送では、病院から施設まで、または施設から病院まで、市内移動だけで片道30〜40分かかるケースも珍しくありません。
搬送を依頼される際は、所要時間の目安をあらかじめお伝えするようにしています。
状態が不安定な方の場合は特に、搬送中に容体変化が起きる可能性を見越した準備——酸素ボンベ・パルスオキシメーター・観察体制——が必要です。
老人ホームは多い。でも介護タクシーの利用は限られている
八王子市内には多数の老人ホームや介護保険施設があります。それだけの高齢者施設が立ち並ぶということは、そこからの通院・受診・転院の需要が大きいはずです。
しかし実感として、施設からの介護タクシー利用の依頼はまだ少ないと感じています。
理由はいくつか考えられます。施設が内部の送迎手段を持っている場合、外部の介護タクシーを呼ぶ習慣がない場合、あるいは介護タクシーの存在自体が周知されていない場合。
いずれにせよ、「施設に入所している=移動の心配がない」ではないのが現実です。病院受診・転院・外出の機会は施設入所後も発生し続けます。
特にパーキンソン病専門のような専門施設(PDハウス八王子など)では、定期的な専門外来への通院が入所後も続きます。
施設スタッフが全員の通院に付き添えるわけではなく、家族も仕事等の都合があります。
そうした隙間を埋める存在として、介護タクシーの役割があると考えています。
5. 実際のご依頼例①:右田病院から東海大学八王子病院への転院搬送
右田病院に入院中の50代男性を、東海大学八王子病院へ転院搬送したときのことです。
この方は心不全で右田病院に救急搬送された後、専門的な処置が必要になったことから、循環器対応の充実した東海大学八王子病院へ転院することになりました。
意識はあり会話もできますが、自身での体動は困難な状態。弟さんが別の車両で搬送先に向かってくださいました。
搬送中は、パルスオキシメーターとスマートフォンのSpO2観察アプリを使いながら数値を継続確認し、あわせて胸部症状の変化がないかも随時確認しながら走行しました。
心不全の方は、体動や姿勢の変化で呼吸苦が増すことがあります。
リクライニング車椅子で体位を整え、酸素ボンベで安定した酸素投与を維持しながら、できるだけ揺れの少ない走行を心がけました。
転院先の東海大学八王子病院に到着した際、弟さんから「ありがとうございました。安心して乗せられました」とお声がけいただきました。
心不全という、状態変化の読みにくい病態での搬送。
「ちゃんと届けられた」という手応えと、「医療の目で状態を見ながら運んでほしい」という家族の思いを、改めて受け止めた搬送でした。
使用資器材:リクライニング車椅子、酸素ボンベ、パルスオキシメーター、スマートフォン(SpO2観察アプリ)
6. 実際のご依頼例②:PDハウス八王子から眼科通院の付き添い
PDハウス八王子は、パーキンソン病の方を専門に受け入れる施設です。施設の性格上、入所者の多くが外来通院を継続しています。
今回のご依頼は、施設に入所中の70代女性の白内障術後の定期受診。車椅子をお使いで、お一人では移動が難しい状態です。
息子さんが仕事の都合で付き添えないため、仲間の介護タクシー事業者に連絡が入り、そこからの連絡で、はばたきにご依頼をいただきました。
施設から眼科クリニックまでの送迎だけでなく、診察室での付き添いも担いました。先生の説明を一緒に聞き、ご本人にご理解とご了承をいただいたうえで次回予約の日程も確認しました。
ご高齢の方には医師の説明が早く感じられることもあり、その場で「今日は何と言われましたか?」とお伝えできる同席者がいるだけで、安心感がまるで違います。
帰りの車中、「またよろしくね」と声をかけていただきました。
単なる移送ではなく、「目の前の方の代わりに情報を受け取り、安全に届ける」という役割を担えた、そんな依頼でした。
移送だけでなく付き添いとしての役割が求められるのは、特に「家族が仕事でどうしても行けない」ときです。家族が行けない理由は様々ですが、その日の通院を「誰かに任せたい」という気持ちは共通しています。信頼を持って任せてもらえるように、と意識した一件でした。
使用資器材:車椅子、膝掛け
7. 介護保険と民間サービスの使い分け(要点のみ)
介護保険タクシー(通院等乗降介助)は、要介護1〜5の認定を受けており、ケアプランに組み込まれた通院・行政手続き目的に限り使えます。退院搬送・転院・ストレッチャー対応・入所者の外出付き添いなどは、自費の介護タクシーが選択肢になります。
詳しくは→ 介護保険で介護タクシーは使える?利用条件と注意点
8. 救急車を呼ぶべきか迷ったとき(要点のみ)
意識がない・呼吸が苦しい・突然の激しい頭痛・胸痛・大量出血など、一刻を争う症状は迷わず119番を。緊急性はないが一般タクシーでの移動が難しい場合(退院・転院・SpO2管理が必要な通院など)は、医療従事者が運営する介護タクシー・民間救急が選択肢です。東京都では#7119(救急安心センター東京、24時間対応)に電話して相談することもできます。
詳しくは→ 救急車を呼ぶべき?民間救急・介護タクシーとの違い
9. まとめ:八王子市の移動資源を組み合わせる
| 状況 | 活用できる手段 |
|---|---|
| 重度障害・タクシー代を補助したい | タクシー助成券(月8〜12枚・1枚300円) |
| 助成券を介護タクシーに使いたい | ★福祉有償運送事業者でも使用可(八王子市固有) |
| 障害のある方の社会参加・外出同行 | 移動支援事業(月12〜30時間、非課税世帯は無料) |
| 近距離の日常外出 | はちバス(100〜200円・障害者手帳半額・4コース) |
| はちバス(100〜200円・障害者手帳半額・4コース) | 介護保険タクシー(ケアマネに相談) |
| 施設入所中の通院・外出付き添い | 医療従事者が運営する介護タクシー・民間救急 |
| 難病の方への経済的支援 | 特定疾病患者福祉手当(月4,000円) |
八王子市は広大です。同じ「八王子市内」でも、駅近の住宅地と山間の集落では移動の難しさがまるで違います。
186km²という市域の中で、「その方の住んでいる場所」「向かう先の医療機関」「体の状態」を踏まえた移動手段を選ぶことが、安全な搬送の第一歩です。
不明な点は、八王子市障害者福祉課(042-620-7245)や担当ケアマネジャーに相談されることをお勧めします。
介護タクシーはばたき
東京都日の出町 / 代表:仲田泰明(救急救命士・元救急隊員19年)
転院・退院搬送、施設への外出付き添い、酸素投与中の通院送迎など、お気軽にご相談ください。
酸素投与・吸引処置対応、医療従事者の目で状態を確認しながら搬送します。